カブスのダルビッシュ有投手(34)が25日(日本時間26日)、今季の公式戦最終登板となる敵地ホワイトソックス戦に先発。7回3安打無失点と好投し、ハーラートップとなる8勝目(3敗)を挙げた。

今季、快投を続けたダルビッシュ。動作解析を研究する筑波大准教授で硬式野球部監督の川村卓氏(50)が、昨年からの変化を分析しました。

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今季のダルビッシュのボールを分析すると、球種全体で球速が2~3キロほどアップしています。その理由として、フォームの大きな変化が挙げられます。まず1つはリリースポイント。昨季前半と比べて約10センチほど上がっています。より上から、しっかり投げられているのは、球速が上がる要因の1つです。

昨年までは右腕が体の後ろから出ていて、肘がひっかかって上がりにくくなっていました。しかし、今年は腕を後ろに引きすぎないことで、右肘が背中側に入りにくくなって腕が上がりやすくなり、胸も張りやすくなっています。肘の位置が低いと、先に上体を回して体が開きやすくなってしまい、ボールの回転もうまくかかりません。右肘がスムーズに上がり、胸を張れるようになったことで左肩を無理に回さなくても、右腕が出てくる。肩甲骨が無理なくなめらかに動き、肘が上から出てきて、トップをつくるのも遅れなくなりました。

もう1つは左膝です。昨年の前半まではわずかに左膝が外側に割れていました。よって体が早く開いてしまい、リリースが早くなってボールが抜けやすくなっていました。今年は左膝がしっかり閉じて、膝頭がホーム方向に向かっています。無理なく、無駄なく、効率よく下半身の力を上体に伝えられています。

フォームの変化は球速アップに加え、球質にも変化を生んでいます。特筆すべきは縦と横の変化量。ダルビッシュの投球の約6割を占めるスライダー&カットボールに着目すると、ともに横の変化は昨年より小さくなっています。昨季までは制球が利かないほど曲がっていたスライダーは、約5センチ横変化が小さくなって左右のコースにより制御できるようになりました。逆に縦変化は大きく(約7センチ)なっているので、横に滑りながらグッと落ちるイメージ。カットボールは横は3センチ、縦も約3センチ小さくなっていることで、打者から見ると、150キロ近い球速と相まって浮き上がりながら手元でキュッと横変化するイメージでしょう。両球種とも、かなり打ちにくいはずです。

肘がしっかり上がり、膝が割れなくなったことで、スピンがかけやすく、制球力も上がったダルビッシュ。フォーム、球速、球質すべての条件が満たされたことで、最高峰の投球を生んでいるといえます。

◆川村卓(かわむら・たかし)1970年(昭45)5月13日、北海道江別市生まれ。札幌開成で88年夏の甲子園出場。筑波大でも主将。卒業後、浜頓別高校の教員および野球部監督を経て、00年10月に筑波大硬式野球部監督。現在は体育系准教授も務める。専門は野球の投球動作、打撃動作の分析、スポーツ科学など。野球専門の研究者として屈指の存在。