堅調な市場として裾野を広げてきたチーズ市場だが、今年度は新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響で、新たな局面を迎えている。消費行動など「新しい生活様式(ニューノーマル)」の浸透が進む中、家庭用市場は「巣ごもり消費」の定着で需要が高水準を維持している一方、外出自粛の継続などで業務用市場は苦戦が続く。
消費も輸入も過去最高を更新
各社、安定供給を最優先とし底堅い消費者ニーズに対応しているが、販促活動や商品理解の浸透についても、今までとは異なる方法がますます求められていきそうだ。先行きが不透明で暗い空気があることも事実だが、こうした時こそ、今では遠くなってしまった海外の空気を感じられるナチュラルチーズや、家庭でのさまざまな楽しみ方を提供するプロセスチーズの、カテゴリーとしての底力の発揮が期待される。 農林水産省が7月17日に公表した2019年度(2019年4月~20年3月)の「チーズの需給表」によると、総消費量は前年比1.5%増の35万8229トンとなり、5年連続で過去最高を更新した。ナチュラルチーズ輸入量も昨年に引き続き最高記録を更新し、同2.6%増の28万6938トン。健康志向に加え、おつまみ・料理需要の高まり、外食メニュー定着などを背景にした堅調な需要が見られた1年となった。 内訳は、ナチュラルチーズが前年比3.5%増、プロセスチーズが同1.5%減で着地。両カテゴリーとも直接消費用(プロセスチーズ原料以外)での伸びが見られ、特に輸入ナチュラルチーズでは前年比3.8%増となった。 一方、国産チーズ生産量は、ナチュラルチーズが同2.2%減。プロセスチーズ原料は同7.0%減となり、合わせてプロセスチーズ生産量も微減となったが、直接消費用は同1.9%増となった。家庭用・業務用ともにチーズの使用が定着し、喫食機会も増加していることがうかがえる。
家庭用のニーズに変化
家計調査を見ると、2019年度の1世帯当たりチーズ消費は引き続き前年を上回って推移した。各社取材を総合すると、家庭用チーズは金額で1~2%増、数量で2~3%増と推測される。プロセスチーズは金額・数量ともほぼ前年並み、ナチュラルチーズは約5%増で推移したとの見方が多勢だ。 プロセスチーズは最大ボリュームのスライスと、ポーションがほぼ前年並みを維持し、ベビーが家飲み需要の高まりで伸長。ナチュラルチーズはシュレッドが料理用途の浸透で、大容量化トレンドで数量が金額の伸びを上回った。カマンベールは一昨年の健康報道効果の裏年となったが、ブルーチーズと同様にベースアップが続く。 昨年度第4四半期(2020年1~3月)からは新型コロナウイルス禍による影響で、需要が急激にアップ。外出・外食の自粛や在宅勤務の定着、臨時休校などさまざまな要因が重なったことで、「巣ごもり消費」による内食需要が高騰。全国に緊急事態宣言が発令されるなどした4~5月はピークを迎え、例年の最需要期である12月を上回る高水準で、前年比2桁増での推移となった。 時期を経るにつれてニーズの高まるタイプに変化が見られるのも特徴だ。感染拡大が問題化した当初は学校給食や外食の代替として、パスタと合わせて粉チーズの需要が高騰。その後外出自粛・テレワークの開始で朝食・昼食向けにスライス、シュレッドが伸長した。さらに自粛ムードが長期化を見せ始めると、ストレス・疲労感の蓄積から「楽しみ」の方向へ推移し、クリームチーズなど菓子調理用途や嗜好(しこう)性の高い商品が伸びてきている。 ただし、スーパーマーケットなどでの購入点数が増加している一方、販促方法や売り方にも変化が迫られている。店頭での試食販売が休止され、イベントなどでの理解促進が難しい状況にある。各社は供給責任を第一義に生産設備をフル回転させているが、デジタルコミュニケーションの活用や、ストーリー性を持たせた商品設計など、現在の状況での最善策を講じている。 下期からも、新たな生活様式における消費者志向に応える商品展開を計画。最需要期に向けてプロセスチーズ、ナチュラルチーズともにさまざまな取組みが進みそうだ。
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August 25, 2020 at 11:21AM
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チーズ市場は家庭用は需要増も業務用が苦戦(日本食糧新聞) - Yahoo!ニュース
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