5月末に中・上級者のアマチュア向けに「80を切るためのオンラインセミナー」を開催した。新型コロナ感染症の拡大を防ぐため外出自粛が求められるなか、アマチュアゴルファーの疑問や悩みに答えようと企画したが、多くの方に視聴いただいた。
今回のオンラインセミナーでは、事前に質問を送ってもらい質問数の多いテーマをセミナー内で取り上げた。その中に「シングルプレーヤーになるためにどうすればいいのか」という質問があったので、欧米の名コーチの言葉とともにセミナー内容をご紹介したい。
■スイングをシステム化する
シングルプレーヤーになるために、飛距離が出て再現性の高いスイングを身につけることは絶対条件だ。高次元なパフォーマンスを発揮できるスイングシステムを構築する必要がある。システム化するというのは、単に機械のように毎回、同じ動きをするというだけではない。すべてにおいて再現性があるかどうかが大事なのだ。
システム化されているかの目安として、自分のスイングを言語化できるかどうかがポイントになる。自分のスイングをどのように構築して、どのような傾向があるのかをきちんと自分で説明できなくてはならない。それはつまり、経験や感覚ではない、ロジカルで科学的な根拠に基づいたスイングをするということだ。そうすれば、調子を落としたときや感覚が狂ったときに、どこに問題があるのかを自分で気づくことができるし、コーチや周囲の人に指摘されても「ああ、そうか」とすぐに理解することができる。
当然のことだが、スイングを固めて飛距離が落ちてはどうにもならない。飛距離が多少落ちても、アプローチやパッティングでカバーできると思っている人もいるだろうが、シングルプレーヤーレベルになるとそうはいかない。ボギーを打たないだけではなく、バーディーも取る必要があるため、ピンを狙うショットを短い番手で打つ必要がある。ティーショットで安定的に距離を稼ぐことが良いスコアにつながるのだ。
これについては、きちんとした科学的な裏付けもある。コロンビア大学ビジネススクール教授のマーク・ブローディが著書「ゴルフデータ革命」において、ドライバーショットの平均飛距離が20ヤード伸びると、1ラウンドでプロの場合は0.75打、90でラウンドするアマチュアは1.6打スコアが縮まるというデータを示している。さらに、初級者と上級者のスコアの差は3分の2をロングゲームが占め、ショートゲームは3分の1を占めるという。要するに、正確で飛距離を出せるスイングを構築することが、スコアを向上させるためには不可欠ということだ。
■基礎が固まったら、実践で役立つようにシフト
スイングが固まり飛距離も伸びたら、次に大事なのは、ショットの応用力だ。
ショットの応用力の重要性について、ポール・ケーシーなどを指導するコーチ、ピーター・コスティスは「多くのアマチュアは練習場のマットの上でスイングフォームの美しさを研究しているが、彼らは本当に大事なショットの練習はしない。シングルプレーヤーになるためにはフェードやドロー、ウェッジを用いたノックダウンショットなどの練習をしなければならない」と語っている。
どのようなスイングをするのか、どのように体を使うのか、と迷っているうちは、まだシングルプレーヤーにはほど遠い。フォームを固めたら、練習で球筋をコントロールする術を身につけ、スコアを出すための技を磨くために時間を割かなくてはならない。
自分のスイングを確立した後にこそ、「本当のショットの練習」が待っているのだ。
キーガン・ブラッドリーやレクシー・トンプソンなどの名選手を育てた名コーチ、ジム・マクリーンは、アマチュアが良いスコアを出すために戦略的な取り組みの重要性を説いている。
「アマチュアへの指導では、プレーの細かいデータから詳細を熟知し、改善に向けた練習法を決めていく。ロングゲーム、ショートゲームの明確な改善プランを持つことが上達への最短の道となる」
ゴルフは練習場で何球も同じ球を打つスポーツでも、スイングの美しさを競う種目でもない。いかに継続的にコース上で少ないスコアでラウンドするかを競うゲームだ。データから自分の強みと弱みを分析し、プランを決め、実行し、改善していく。PDCAサイクルを回していくことで、競技で活躍できるシングルプレーヤーになることができるのだ。
スイングが固まっておらず、ラウンドごとに毎回スイングのコンセプトが変わるようでは、上達を望むことはできない。自分のスイングの型が決まらなければ何も始まらないのだ。細かな技術論にとらわれる前に、まずは自分にベストなスイングモデルを見つけることに注力しよう。シングルへの階段はそこからがスタートだ。
(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)
◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ https://ift.tt/2gRyqUl
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