コントが致命的に面白くない。
でも、その一点を除いては純粋に応援したいと思えた、『コントが始まる』(日本テレビ系)。
若手きっての演技派俳優・菅田将暉が主演で、脇を固めるのも神木隆之介、仲野大賀、有村架純、古川琴音と20代の実力者揃いとあって、4月期ドラマのなかでも特に注目度の高かったドラマである。
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売れないお笑い芸人トリオ「マクベス」を菅田、神木、仲野が演じ、有村、古川はそんな彼らの隣のマンションに住み、「マクベス」を応援する姉妹役。
毎週土曜22時放送の本作は今夜、第3話が放送されるが、先週放送の第2話までを見ると、このドラマの “フォーマット” がわかってくる。
冒頭は「マクベス」のコントの前半部分が流れ、そのコントの内容にリンクした物語がその回で展開していき、ラストにそのコントのオチ部分が流れるという構成になっている。
■“売れない芸人”という設定を差し引いてもつまらない
このコントパートが、とにかく面白くない。
1話のコント「水のトラブル」は、ラーメン店スタッフが触れた液体すべてをメロンソーダに変えてしまう設定。2話のコント「屋上」は、新婚カップルの向かいのビルの住人が飛び降り自殺しようとする設定。
“面白い” と感じるかどうかは主観によるので、もちろんこのコントを面白いと感じる人もいるだろうが、テレビのネタ番組やコント番組をわりと頻繁に視聴している筆者の個人的感想としては、「1ミリも面白くない」だった。
「マクベス」は鳴かず飛ばずのまま結成10年が経とうとしている売れない芸人トリオ。ネタがめちゃくちゃ面白くては、“売れない芸人” という設定に少々矛盾が生じてしまう。だから意図的に面白くないようにしている――という解釈もできなくもない。
しかし、そうやって好意的に解釈したとしても、『コントが始まる』というタイトルで期待値が上がってしまうので、あそこまでつまらないコントを放送するのは逆効果ではないだろうか。
思うに、その回のストーリーとリンクさせることに引っ張られすぎて、コントとしてのクオリティがおろそかになっているように感じる。
もしかすると、第1話、第2話あたりの序盤はあえてつまらなくして、中盤から終盤にかけてのコントを右肩上がりに面白くしていく算段なのかもしれないが、少なくとも2話までのコントは、まぁつまらない。
■挑戦的・実験的で斬新な “終わりに向かっていく物語”
だが最初にお伝えしたとおり、筆者はこのドラマを純粋に応援したいと思っている。
その理由は、挑戦的・実験的な作品であるからだ。
ここまでお読みいただければ、本作が異色のストーリー、異色のフォーマットのドラマであることはおわかりいただけたはず。
近年は視聴率が安定して取れるという理由で刑事もの、医療もの、法廷ものといった既視感だらけのドラマが氾濫している。恋愛ドラマも根強い人気があるが、やはり昔どこかで観たことあるようなマンネリ気味の作品ばかりだ。
そこにきての『コントが始まる』。斬新で目新しい。
芸人が主役の作品は、品川ヒロシ原作・監督の映画『漫才ギャング』(2011年)や、又吉直樹原作の映画『火花』(2017年)などがある。
ちなみに『火花』は菅田が桐谷健太とダブル主演しているが、『コントが始まる』は『漫才ギャング』とも『火花』ともテイストが違い、“新しいもの” を作ってやるという気概を感じるのである。
本作は、コントパート以外も、お笑い的な意味でいう面白さはほぼない。けれど、感動的な意味での面白さはある。
「マクベス」は売れない現状を憂い、2カ月後に解散することになっている。もしかすると解散宣言を撤回して芸人を続けていくという展開があるかもしれないが、おそらくは最終回に解散を迎え、終幕する物語なのだろう。
初回で主人公が大病を患っていることが明示され、最終回に向けて死期が近づいてくる『木更津キャッツアイ』(2002年/主演:岡田准一/TBS系)や、ひと夏の終わりとともに主人公2人が海を去っていく予感がしていた『ビーチボーイズ』(1997年/主演:反町隆史、竹野内豊/フジテレビ系)など、“終わりに向かっていく物語” は、やはり切ない。
『コントが始まる』も “終わりに向かっていく物語” であり、常にそんな切なさの空気をまとった作品。“笑い” ではなく “切なさ” を求めている方にはおすすめである。第3話は今夜22時から放送だ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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