どんな励ましも耳に入らない、生きる苦しみから人を救うのは「あほやなぁ」と笑える悲劇と表裏一体の喜劇なのかもしれない。
『おちょやん』(NHK総合)第13週では、一平(成田凌)が幼い頃に生き別れた母・夕(板谷由夏)と再会。しかし、そこで一平は思いも寄らぬ真実を知る。女好きの父・天海天海(茂山宗彦)に追い出されたと思っていた母は余所に男を作り、一平を置いて自ら出て行っていたのだ。
天海への憎しみだけで突き進んでいた一平は、息子に本当のことを黙っていた思わぬ父の“無償の愛”を知り、抜け殻に。弟との別れの苦しみから自分を救ってくれた一平を励まそうと、千代(杉咲花)は夕が出て行った当初を知るハナ(宮田圭子)から聞いたことを話し始める。
夕を心から愛していた天海は彼女がいなくなった後、今の一平のように日々悲しみに暮れ、役者も辞めようとしていたのだという。そんな天海を救ったのは、意外なものだった。実は母を恋しく思った一平が自らに化粧を施し、母に擬態。その顔があまりにも滑稽で、天海もハナも一緒になって大笑いした。そこで改めて“笑い”の意義を知った天海は、喜劇を続ける覚悟をしたのだ。
その出来事は、かつて一平が仲間に殴られた顔で千之助(星田英利)を笑わせ、彼の頑なだった心をほぐした時のことと重なる。一平はそうして何度も空気の読めない、時には不謹慎な“笑い”で多くの人を救い、困難を乗り越えてきた。千代から天海が喜劇にこだわった理由を聞き、一平はもう父に謝れないことを悔やみ涙を流す。そんな一平に千代がかけたのは、「一人やあらへん」という言葉だ。前週、一平が千代を抱きしめ与えた温もりとその言葉は本当のところ誰よりも彼自身が欲していたものだろう。
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