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Wednesday, October 21, 2020

EVに陶酔する市場、米新興メーカー上場ラッシュ - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)に展示されたフィスカーの新型EV「オーシャン」(2020年1月、ラスベガス)

Photo: Bridget Bennett/Bloomberg News

 この夏の初め、Hyliion(ハイリオン)やフィスカー、ローズタウンといった米電気自動車(EV)新興企業は、従業員が数十人の小さなメーカーにすぎなかった。そのうち2社はプロトタイプを製作した程度だ。いずれも売上高を計上したことはまだない。

 現在、株式市場の投資家は3社の企業価値をそれぞれ30億ドル超と評価している。

 EVセクターは熱狂の渦に飲まれている。EVの先駆者テスラの株価急騰や、新興企業を上場させる白紙小切手会社の乱立を背景に、投資家は脱・内燃エンジンで一変する自動車市場の未来の巨人を見つけ出そうと期待を膨らませている。

 EV新興2社がここ数ヶ月で上場を果たし、他にもEVやバッテリー企業4社が上場計画を発表している。いずれも収益はごくわずかか、皆無となっている。

 フロリダ大学のジェイ・リッター教授(金融論)のデータによると、収益のないこれほど多くの企業が、これほど高い評価額での上場を目指したことはかつてなかった。

 こうした創業期の企業は本質的に高リスクだ。組み立てラインや販売体制を築くにあたって、ベンチャーキャピタルから資金を調達するのが一般的だ。だが、これらのEV新興各社は、製品の製造が可能であることや、実行可能なビジネスモデルを持つことを証明する前に、通常よりはるかに早い段階で白紙小切手会社との合併を通して上場している。白紙小切手会社とは、株式非公開の企業と合併するために上場している「空箱」会社のことで、非公開企業はこれにより新規株式公開(IPO)の手続きを回避することができる。

 自動車技術に投資しているインデックス・ベンチャーズのパートナー、マイク・ボルピ氏は上場ラッシュについて、「市場の陶酔の産物だ」と語る。同氏は欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の取締役を務めている。

 ボルピ氏によると、いかなる市場環境においても新興EV企業の立ち上げは極めて難しいが、従来型の自動車大手がこぞってEVに注力している現在はなおさらだ。

 EV企業の支援者たちは、自動車の電気時代が近づき、多くの新規競合やブランドが参入する道が開かれたと指摘する。複数の国やカリフォルニア州ではEVの普及を義務付ける規制もでき、市場を丸ごと創り出しているという。さらに、巨大な自動車メーカーが素早く軸足転換して競争することはできないとの見立てだ。

 新興企業のうち1社だけでもEV大手に成長すれば、何百億ドルという価値になるかもしれないと投資家は語る。

 フィスカーとその出資者らは、同社株がバーゲン品かに思えるような売上高予想を提示している。フィスカーは2025年までに売上高が130億ドルに達すると予想しているが、今年の売上高はゼロだ。8月上旬の時点で従業員は49人、設計したプロトタイプは一点だった。同社は証券当局への提出資料で、採用を拡大しており、自社設計の車を製造するために他社と多くの契約を結ぶ予定だとしている。

 電動ピックアップトラックの製造を計画している創業1年のローズタウン・モーターズは投資家向け説明会で、2024年の売上高が58億ドルになるとの予想を示した。9月時点の従業員数は約100人だった。

 リッター教授のデータによると、2020年以前には、売上高を全く計上していない米企業が30億ドル以上の評価額でIPOに至った例はわずか5社だった。売上高ゼロ、評価額が10億ドル以上でIPOを実施する企業の3年間の平均リターンはマイナス41%だという。

 今年に入り4倍余り値上がりしたテスラ株でさえ、業界関係者の多くを困惑させている。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は5月、株価が高すぎると発言した。同社の時価総額はおよそ4000億ドルと、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードを合わせた時価総額のおよそ5倍に達している。一方で、2019年の売上高はGMとフォードを合わせた額の12分の1だ。一部の投資家はイノベーターとしてのマスク氏に強い信頼を寄せ、テスラは先陣を切ったことで、EVが占拠する将来の市場で大きなシェアを獲得するとみている。

 EVを巡る投資家の熱狂に批判的な向きは、EVトラックメーカーのニコラを例に挙げる。ニコラは水素燃料セルとバッテリーを駆動力とするトラックの製造を目指している。同社は6月、特別買収目的会社(SPAC)を通して上場。時価総額は一時300億ドルを突破し、フォードを超えた。

 空売り筋による9月のリポートで、ニコラが技術や進捗(しんちょく)状況を誇張しているとの疑惑が指摘され、同社株は50%余り急落。当時は会長を務めていた創業者がこの騒動で辞任した。ニコラも前会長も疑惑を否定している。

 ブレーク・デントン氏(25)は株式取引アプリ「ロビンフッド」で売買している。ニコラの急騰を目にし、個人投資家の熱狂ぶりを踏まえれば他のEV企業も似たような上昇軌道をたどるかもしれないと考えた。

 デントン氏は掲示板サイト「レディット」を見ていた際、セミトラック向け電気ドライブトレインの大量生産を計画するハイリオンについて知った。ハイリオンはSPACのトータス・アクイジション・コープIIとの合併を通して6月に上場する計画を発表。オンラインで話題になり始め、次なるニコラかとの声も出ていた。

 「話題沸騰の株だったのでハイリオンに投資した。文字通りの話題沸騰だった」とデントン氏。「会社のことは何も知らなかった」

 株が値上がりしたところで売却し、5万ドルほどもうけたという。

ハイリオンのトーマス・ヒーリーCEO(2017年)

Photo: F. Carter Smith/Bloomberg News

 ハイリオンのトーマス・ヒーリーCEO(28)はカーネギーメロン大学で機械工学の学位を取得して卒業。天然ガスと電気を駆動力とし、ディーゼルを必要としないドライブトレインを製造する計画を徐々にまとめ始めた。2015年にハイリオンを設立し、規制当局への提出書類によると、6月時点で52人の従業員を抱えていた。調査会社ピッチブックによると、これまでに5000万ドルを調達している。

 ハイリオンが生産した初期製品は二十数点にも満たないが、トラックをトヨタのプリウスのように変える製品だと同社は述べている。より高度な電気ドライブトレイン1200台以上の受注を発表したものの、まだ製造には至っていない。2022年までに実質的な売上高を計上する見通しはないという。

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