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Thursday, August 27, 2020

コラム:安倍首相の健康問題よりパウエル講演、市場の本音に迫る - ロイター (Reuters Japan)

[東京 27日 ロイター] - 安倍晋三首相は28日午後にも、記者会見する予定とされる。健康問題に注目が集まり、政権運営の行方にも大きな影響が出かねない情勢だが、東京株式市場をはじめマーケットは反応が鈍い。「辞任」の可能性が低いとみているだけでなく、コロナ禍の中でだれが次の首相になっても大盤振る舞いの財政・金融政策を直ちに変更できないとの見方が根強いためだ。

東京市場では、8月に2度慶大病院に行った安倍晋三首相の健康問題よりも、27日に行われるジャクソンホール会合でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演に注目が集まっている。円高と株安の引き金を引くリスクがあるからだ。写真は米上院銀行委で証言を始めようとするパウエル議長。2017年6月22日に撮影(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

ただ、27日からの米カンザスシティ地区連銀主催イベント(ジャクソンホール会議)でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がゼロ金利の長期化に言及すれば、米長期金利US10YT=RRの低下を経由してドル安が起き、円高を嫌気した日本株安の可能性は残る。市場は「太陽」である米国の金利動向を注視し、「惑星」といってよい日本の首相の動静は二の次というスタンスのようだ。

<安倍首相交代でも変わらぬマクロ政策>

8月に入って2度も慶應義塾大学病院を訪れ、「検査」を受けた安倍首相。永田町では「通院」しながら政権を運営していくという見方から、早期に退陣を表明するのではないかという観測まで、多様な思惑が広がっている。

ロイターも含め、28日は安倍首相の会見が設定される見通しというニュースが伝えられているが、東京株式市場の反応は極めて抑制的だ。ある国内証券の関係者は「安倍首相が近々、辞任を表明すると見ている参加者はごく少数だろう」と話す。

ただ、複数の国内銀行関係者は、市場の反応がないのは、それだけではないと指摘する。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、過去最大の落ち込みとなった2020年4─6月期国内総生産(GDP)だけでなく、その先も回復力が鈍く、政策当局者の中には「全治3年」との見立ても出るほど、先行きの国内経済は難題が続くと見られている。

弱い外需とインバウンドなき内需という国内経済を立て直すには、当面、財政支出の拡大と超金融緩和の継続は避けて通れない。国内銀関係者の1人は「仮に石破茂・元自民党幹事長が新首相になっても、現在の財政・金融政策は修正できないだろう。とすれば、安倍首相が辞任を表明しても、株価が大幅に下げるリスクは小さい」と予想する。

別の国内銀関係者も「日経平均.N225でみて、安倍首相の辞任がニュースになっても200円前後の下げにとどまるのではないか」と述べ、現在の超金融緩和の路線が続く限り、緩和マネーが株式市場に流入して、株価の下値は限定的になると説明する。

<パウエル講演で円高・株安のシナリオ>

一部には、「安倍ショック」で円高になり、株安に連鎖するシナリオを指摘する声もある。ただ、先の国内銀関係者は最近の外為市場では「米株高が続くと円高にはならず、それが日本株をサポートする要因にもなるケースが多い。安倍辞任以外の別の理由で円高になり、それが日本株安につながるリスクの方がずっと大きそうだ」と話す。

実際、東京市場では、27日から始まるジャクソンホール会議に対する注目度が大きい。中でもパウエルFRB議長の講演への関心が日増しに高まっている。

パウエル議長は、FRBの金融政策のフレームワークの見直しをテーマに講演する予定だが、市場関係者の一部では、2022年まで事実上ゼロ金利を継続するとしている現在のフォワードガイダンスを見直し、さらに2、3年期間を延長してゼロ金利を継続する可能性に言及するのではないかとの思惑がある。

また、「平均インフレ目標」の考え方を前面に打ち出し、2%以下の期間に見合って2%を超える物価を容認する期間を設定する考え方に傾斜していることを示せば、それも緩和期間の延長と市場が受け止めることになるだろう。

いずれにしても、緩和をさらに強化する方針をパウエル議長が打ち出せば、米長期金利が低下方向にシフトする可能性が高まる。そのケースでは、ドルが主要通貨に対して下落し、対円でも102円程度までのドル安/円高になる展開を想定している参加者もいる。

「円高に弱い日本株」というイメージは、依然として市場参加者のコンセンサスになっており、このケースにおける日本株への売り圧力が最も大きくなるのではないかと筆者は予想する。

他方、米財政赤字の膨張に対する懸念を起点にした米長期金利の上昇圧力も、米債券市場には相応に存在しており、パウエル議長がゼロ金利の長期化に言及しても、米長期金利が急低下することはなく、結果として円高圧力も大きくならないまま、市場は織り込みを終了させるのではないか、と予想する。

<閉塞感の強い日本経済>

それよりも、日本にとって問題なのは「誰が首相になっても、マクロ政策の根幹は変わらない」という閉塞感の充満ではないか。

米アルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグルに代表されるGAFAのような世界市場を左右するIT企業がない日本にとって、潜在成長力を高めて雇用を吸収できる新たな産業や企業の育成が不可欠の課題となっている。

しかし、現実にはコロナ感染の拡大に直面して「青息吐息」の大企業が目立ち、新たな環境をチャンスにして、売上拡大を目指す若々しい企業は目立たない。このままでは、こうした現状こそが「日本売り」の大きな原因であるとして、世界の投資家から注目される日が到来しかねないと危惧している。

●背景となるニュース

・ 安倍首相、28日に会見の方向で調整 再受診の後=関係者

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編集:石田仁志

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