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Tuesday, March 17, 2020

米市場動揺、干上がるマネー 企業の資金調達に逆風 - 日本経済新聞

米企業の資金調達環境が悪化している。運転資金を調達するコマーシャルペーパー(CP)の市場では、買い手が減って発行できない企業が出てきた。手元資金を確保しようと、銀行からの借り入れに奔走する例も目立っている。新型コロナウイルスによる市場混乱が長引けば、一部の企業は資金繰りに行き詰まりかねない。企業破綻への懸念が株安を加速させており、市場では早くも米連邦準備理事会(FRB)に一段の緩和を求める声も広がっている。

CPは企業が1カ月間など短い期間の資金を借りるために発行する約束手形。米市場は約1兆ドル(約105兆円)の残高がある。金融機関や、債券などで運用するMMF(マネー・マーケット・ファンド)が買い手だ。

3月に入り、発行が顕著に減っている。ダブルA格の事業法人では1日平均の発行額が28億ドルと昨年11月から4割減った。バンク・オブ・アメリカのマーク・カバナ氏は「CP市場は機能停止状態にある」と指摘する。

CPを引き受けて投資家に販売する銀行の一部は、いったん引き受けを停止している。多くの企業が現金確保のためにCP発行を急ぎ、銀行が抱えきれなくなった。買い手の事情もある。MMFから資金が流出し、MMFは換金に動いている。

CPの金利は跳ね上がっており、航空機大手ボーイングでは国債に対する上乗せ金利が年初の0.3%から1.4%になった。石油大手エクソンモービルの上乗せ金利は1カ月前の0%近辺から0.6%に高まった。感染拡大の影響が大きいホテルやレジャー関連でも上昇が目立つ。自社株買いが活発で資本の薄いスターバックスやマクドナルドでも上がっている。

企業は、市場から銀行に調達先をシフトしている。航空会社では米ユナイテッド航空が融資枠を設定し、欧州勢でも仏蘭エールフランスKLMが融資枠を使った。ビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)など融資枠を使い切る企業もある。

FRBは15日、週末に金融緩和を決めた。金融市場に逼迫感が強まったまま週明けを迎えると信用リスクへの懸念が深刻化しかねないと判断したためだ。米金融子会社がCPを発行するホンダは「CP金利が低下すると期待している」と話す。

ただ、16日もCPの金利は下がっていない。FRBは金融危機時の2008年にCPを直接買う支援策を導入した経緯があり、「今後さらに資金調達が困難となる場合は、同様の措置が講じられる可能性が高い」(みずほ証券の大橋英敏氏)との見方が強まっている。

日本ではCP発行は増えている。「新型コロナへの備えで業種を問わず、事業法人の発行が増えている」(セントラル短資の佐藤健司・総合企画部課長)。銀行や投資信託などの買い意欲はなお旺盛だ。ただ、企業の収入減が長引くようだと警戒感は強まりかねない。

(ニューヨーク=宮本岳則、野村優子、後藤達也、ロンドン=篠崎健太、竹内弘文、岡田達也)

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