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Saturday, December 5, 2020

コラム:株式市場、コロナ禍「飛び越え」強気の2021年へ - ロイター (Reuters Japan)

[ロンドン 2日 ロイター] - 大手投資家は、自らが描くばら色の2021年株価見通しにやや退屈しているようだ。この3月からこの方、同じことばかり話し、計画を立ててきたからだろう。

12月2日、大手投資家は、自らが描くばら色の2021年株価見通しにやや退屈しているようだ。写真は11月、ロンドンの金融街を望むテムズ川で、鳥に餌をやる女性(2020年 ロイター/Simon Dawson)

市場は中央銀行と政府の橋渡しによって2020年という年を実質的に飛び越え、政策対応とワクチンに支えられた相場反発を徐々に織り込んできたようだ。政策もワクチン実用化も、今のところ予想がほぼ当たっている。

世界の総生産(GDP)は第2次世界大戦の直後以来で最大のマイナス成長を記録しているにもかかわらず、MSCI世界株式指数は過去最高値で今年を終えようとしている。

ただ今年の上昇率が10%強に達したとしても、年間で目覚ましい上昇を遂げた19年に比べれば半分にも届かない。それでも過去10年のうちの6年で経験したよりも大幅な上昇だ。特に今年11月は新型コロナウイルスワクチン開発の朗報により上昇が加速し、月間上昇率が過去最大となった。最初に広範なロックダウン(封鎖)が実施された3月の底値からは、実に65%も値上がりしている。

株式市場では、今年起こった未曽有の出来事が覆い隠されてきたも同様だ。

ロイターが実施した調査で21年の株価予想と1年前の予想を見比べると、今年何が起こったのか到底想像できないはずだ。

1年前の調査で示された予想中央値は、20年末までに米S&P500種総合株価指数が5%上昇するというものだった。今年の調査では、21年にはさらに10%の上昇が見込まれ、JPモルガンなどいくつかの大手銀行に至っては約20%の上昇を予想している。

それにも増して多くを物語るのはおそらく、現在の強気相場がいつまで続くと思うかとの質問に対する答えだろう。

19年11月実施の調査では、「2年以上」と答えた割合が20%を下回っていた。ところが今年は、30%以上が現在の強気相場は2年以上続くだろうと答えている。その上、ロイターが資産運用会社を対象に今週実施した調査では、株式の組み入れ比率がコロナ禍前の水準に戻っており、実際のポジションがそうした見通しを反映していることが分かる。

それにしても、さんざん懸念されたコロナ禍の「傷痕」や、政策対応により興奮状態になった市場の「二日酔い」の心配はどうなるのだろう。

多くの市場関係者は、二日酔いは起こりそうもないと考えている。高く積み上がった政府債務、今なお支配的なデフレ圧力、しぶとい需給ギャップに対処するため、金利はゼロ近くで維持される必要があるからだ。

つまり10年にわたる強気相場は「最後の一息」どころか、5カ月間の小休止を取っただけで本格再開しようとしているのかもしれない。

<前代未聞>

「家計所得が増え、可処分所得が増える景気後退など初めて見た」。アビバ・インベスターズのピーター・フィッツジェラルド最高投資責任者は今週の「ロイター・グローバル・インベストメント・アウトルック・サミット」でこう語った。

衝撃的なコロナ禍、巨額の政策支援、残された債務、金利への影響を総合すると、投資家は株式の組み入れ比率を多めにし、リスクを積み増すほかないとフィッツジェラルド氏は言う。

「あなたがレバレッジを掛けておらず、従って市場から振り落とされることのない投資家であれば、お金の価値が下がった今の世界ではリスク資産の組み入れ比率をオーバーウエートにする必要がある」と同氏は語り、「現在は新たな(強気)サイクルの初期段階だ」と指摘した。

もちろん、パンデミックとロックダウンと不況を昨年に予想していた者はおらず、MSCI世界株価指数が3月23日までの27営業日で35%も下落するなどは想定外だった。銀行やエネルギーなど多くのセクターや、ロイターが調査対象としている17カ国の株式市場の半分以上は、年初の水準を下回って今年を終えようとしている。

しかし株式市場だけに焦点を絞り、最も広い範囲をカバーするMSCI世界株価指数を指標とするなら、こうした出来事はポートフォリオにほとんど影響を与えなかったということになるだろう。

そして今後1年間に何が控えているかについては、ほとんど疑う余地もなさそうだ。すべての課題は既に何千回も徹底的にチェックされてきたように見える。ワクチン実用化は視野に入り、数々の景気支援策が実施されている。市場はこれを完全に織り込み済みだと考えることもできそうだ。

もっとも、実際に織り込み済みだと思っているファンドマネジャーはほとんどいない。

調査によって矛盾点もあるとはいえ、家計貯蓄、マネーサプライ、マネー・マーケット・ファンド(MMF)のデータはどれも、コロナ禍でため込まれた多額の現金がまだ投資に回っていないことを示している。景気回復という現実、ワクチン実用化、米新政権の誕生は、明らかになってまだ日が浅いからだ。

予期せぬ事態につまずく可能性は残っている。感染拡大やロックダウンの長期化、効かないワクチン、予想外の政局異変、消極的な金融・財政政策、インフレの脅威などだ。しかし、ファンドマネジャーらは何カ月もこうした出来事を想定してシナリオを立ててきた。

それよりも多くのファンドマネジャーが真剣に時間を費やすのは、いわゆる「正常化トレード」に基づく投資対象の入れ替えだろう。ロックダウンの勝ち組であるITや医薬品株から、エネルギー、銀行、観光、娯楽など、出遅れた「バリュー株」への移行だ。

しかし事態が完全に正常化したとしても、「飛び越えた年」の大きな遺産を疑う者はいない。国債・社債利回りの最も広範な指標であるブルームバーグ・バークレイズ・マルティバースの利回りが、わずか1%に下がったのは前代未聞のことだ。

リーガル&ゼネラル・アセット・マネジメントのソンジャ・ロード最高投資責任者はロイターサミットで、「リスク資産の株式が有望な資産クラスになるはずだ」と語っている。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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