日産「ルークス」はさまざまな技術が搭載されている(同社公式サイト)
日産自動車と三菱自動車は、約6年ぶりに全面改良したスーパーハイト(超背高)ワゴン型の軽自動車「ルークス」と「eKスペース」をそれぞれ19日に発売した。日産が開発を主導し、三菱自が水島製作所(岡山県倉敷市)で生産する兄弟車だ。両社の技術やノウハウを搭載し、提携関係の相乗効果を占う意味でも重要な存在だ。超背高軽の市場は競合他社の自信作がひしめき競争が激しい。先行する競合車と差別化を図り満を持しての投入となる。
日産日本マーケティング本部チーフマーケティングマネージャーの小木曽宏行氏は「すでに受注予約は9000台を超える勢いだ」と期待を寄せ、三菱自商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの吉川淳氏も「超背高軽の新型で国内販売を盛り上げたい」と力を込める。
ただ、超背高軽市場の競争は激化しているのが現状だ。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽協)がまとめた2019年の車名別新車販売によれば、ホンダの超背高軽「N―BOX」は3年連続首位。ダイハツ工業の「タント」やスズキの「スペーシア」も常に上位に来る人気車だ。
SMBC日興証券の木下寿英株式調査部シニアアナリストは「同市場のユーザーはわがままなニーズを持つ」と分析する。コストパフォーマンスや居住性の高さ、安全技術など満たすべきニーズは少なくないという。
厳しい競争を強いられる中で、日産と三菱自の担当者は競合車との差別化ポイントは「技術領域だ」と声をそろえる。両車ともスライドドアには、片足を車体の下にかざすだけで、自動開閉する機能を付けた。安全面では高速道路の同一車線上で運転を支援する技術のほか、2台前を走る車両をミリ波レーダーで検出し、自車から見えない前方の状況を把握できる機能を加えた。これらの技術は日産のミニバン「セレナ」や高級セダン「スカイライン」に搭載した機能を応用した。
登録車と同等の技術を搭載した理由について、日産は「(軽の)ファーストカーとしてのニーズが増えたためだ」(小木曽氏)と説明する。一方、軽への先進技術の搭載やその量産化対応で、三菱自は「当社の知見が生きた」(吉川氏)という。導入された技術は日産のものが多いが、三菱自が持つ生産技術や同社サプライヤーの開発力により、軽への搭載を可能にした。新型車は両社の力が融合した力作と言える。
ボリュームが大きい超背高軽市場で規模のメリットを生かし、ユーザーに新しい体験を提供できれば、提携関係の価値向上にもつながる。競合他社も積極的に新技術を超背高軽へ導入している。日産と三菱自の新型車がどこまで存在感を高められるか。戦いの火ぶたは切られた。
日刊工業新聞2020年3月19日
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