前回(2月11日配信)と前々回(同1月16日)の記事では、上海市場の騰落レシオをもとに株式市場がリスクオフとなる可能性に関して注意喚起したが、その後もNYダウの騰落レシオ、原油価格・原油在庫などを根拠に筆者が運営に携わる「株式注意情報.jp」ではリスクオフ相場が継続する可能性について注意喚起していた。
実際に2月中旬から株式市場は大幅な下落相場となった。日経平均株価は先週27日(金曜日)は大量のインデックス買いが入り大幅高で引けたものの、本稿執筆時点の週明け30日は配当権利落ちやトランプ米大統領が外出などの行動の自粛要請を4月30日まで延長したことを受けて軟調に推移している。
ただ、今回のショック安にもやや変化がうかがえる。2月中旬から3月第3週までは米国債券やゴールドといった安全資産までもが売られる場面があったが、先週末に関しては米国債券に安全資産としての買いが入り、それに反応するように円買いの動きも見られた。こうした変化からは、パニック的な売りによるリスクオフ相場から通常モードへと市場が戻りつつあるとも考えられる。
とはいえ、日米ともにこれから発表される経済指標には新型コロナウイルス(COVID19)の負の影響が数字になって表れてくる。加えて、3月期決算企業の21年3月期業績見通しも次第に明らかとなり、ファンダメンタルズの悪化が相場の先行きに暗い影を落とすことが想定される。現状を踏まえれば日本企業は業績の先行きに慎重な見方をせざるを得ず、良い見通しを出すとは考えにくい。
そうであるならば、日銀のETF購入が一定の下支えになるとしても、当面は下落基調を続けるのではないか。
だが、どんな相場であれ金融市場には利益を出す戦略が存在すると筆者は考えている。ここからの戦略としては『長期スタンスで、安いところを丁寧に拾う』ことがゆくゆくはリスクを取った投資家にリターンを…と多くの人が思うところだろう。また同時に、来月から始まる決算発表を前にして個別銘柄は買いにくい、できるだけ底値圏で拾いたいともお考えだろう。
そこで今、筆者が注目しているのは原油ETF(野村原油 <1699> [東証E]など)だ。そもそも在庫増加や4月からのサウジアラビア・ロシア増産による需給悪化などが警戒されてWTI原油価格は大きく調整しており、30日朝方には20ドルを割り込む場面もあった。しかしながら、株式市場よりも早くWTI原油価格の下落が1月初めから始まっていたことを踏まえると、反転のタイミングは株式市場よりも早くなるのではないか。
次回の相場コラムでは、ニューヨークを拠点に活動し金融・商品情報を提供する「よそうかい.com」の松本英毅氏(1バレル=10ドル台の時代から原油市場を追い続けている)に原油の見通しをうかがう予定だ。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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